今回の海洋への処理水(汚染水)放出について、以下の重大な問題点を指摘しておきます。
1)第三者検証が困難であること
放出口が陸域から遠く離れているが故に、これを第三者がモニタリングして、検証することが困難である。あるべき姿は、放流口にそれぞれの核種の自動サンプル・測定を行うべきであるが、それについての情報が不明確である。総量としてどれだけ放出されたかの検証が不明となる。故意または事故によって想定以上の高濃度の放射性物質が放流された場合に確認する方法がない。
2)トリチウム以外の核種濃度が高い汚染水の割合が多いこと
トリチウム単独のベクレル数については、他国の原子力発電所からの放出量が引き合いに出されていますが、高レベル核廃棄物に直接触れた汚染水で未処理の割合が多く、これらが放流前にどのように処理されるか不明であること。
本来、汚染水は、トリチウム以外の核種濃度を十分に下げて放流すべきであり、かつそれを第三者が検証すべきものであるにもかかわらず、(1)によりそれが困難になっています。
なお、以前から指摘している以下の問題点についての回答もありません。
3)汚染水がこれ以上増えない廃炉工法を採用すべきであるが、そのようになっていないこと
4)(3)により、今回の汚染水放出が仮にすべて終わっても、さらなる汚染水放出がありえること
5)汚染水の海洋放出についてそれぞれの核種についての総量モニタリングが困難であること
さらに、「健康への影響」がある、ないによって議論がなされている点についても
6)仮に、ある程度の魚類が放射性核種により汚染されて、それが経済的被害につながったことが証明されれば、東京電力(および日本政府)は賠償責任を負う可能性が高いこと
参考 山敷庸亮, 木村直子. 2012. 東京電力福島第一原子力発電所事故由来の放射性核種の海洋環境影響に対する我が国の法的立場. 日本海洋政策学会誌 2: 133-150.
https://oceanpolicy.jp/wp-content/uploads/5-1-3-2.pdf
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